息抜きリライト「羅生門の後語り」
今回の小説は、大体800文字の超掌編。日々の息抜きで書いたので、いろいろ粗いところがあると思います(笑)
老婆の引剥に成功した下人。この話は羅生門より降りた後の話。
辺りはもわっとした空気が立ち込めている。先ほどまで雨が降っていたからだろう。
京都の裏路地。そんなところで遠くからでもわかるような、大きなにきびを持った男が歩いていた。男は何かを持っていた。あれはくたびれた着物のような気がする。
この町、この路地、くたびれた着物。これらから察するに男は引剥だろう。
男は路地を右側に曲がった。その瞬間、男は歩みを止める。なぜなら、とても衰弱している母娘が目の前にいたからだ。母娘が男の存在に気付いた時には遅かった。母親は蹴飛ばされ、娘は頬を叩かれる。そのままの勢いで二人は倒れこんだ。
「や、やめて!」
「きゃっ!」
男は追撃をやめない。刀を抜いて母親に突き付けた。
「命が惜しくば、言うことを聞け」
男の目は本気だった。
「ひっ」
母親は娘をかばいつつ、コクコクとうなずく。その姿を見た男は、
「...恨むなよ。こうしないと飢え死にする体なのだ」
と言った。
男はまだ裏路地を歩き続ける。先ほどの母娘のような、男に到底かなわない爺婆や子供を襲っていきながら。男は沢山の衣類、金目の物を盗んでいた。あれならばしばらくの生活に困らない量だろう。
「ふう」
引剥はもう終わりなのか、道端に座った。奪ったものを見ながら笑っている。そこには子供の衣服のような物も。ありえないくらいに非道な男である。
「なあ、お前」
男が視線を上げた。その瞬間、思いっきり顔を蹴飛ばす。男は鼻を抑えながら、ゆっくりと立ち上がった。
「ふんっ」
男が何か言う前に、今度は腹を蹴る。
「......」
どうやら気を失ったようだ。
「お前...ずっと俺が後をつけてるのに気づかなかったんだな。そうだとしても、路地裏で休みだしたら命がいくつあっても足りねぇよ。」
男が持っていたものをすべて奪う。
「恨むなよ。俺も飢え死にする体なんだわ」
この後俺は止めを刺すために、男の顔を何回も蹴り続けた。