息抜きリライト「羅生門の後語り」

2018年11月24日

今回の小説は、大体800文字の超掌編。日々の息抜きで書いたので、いろいろ粗いところがあると思います(笑)


 老婆の引剥に成功した下人。この話は羅生門より降りた後の話。


 辺りはもわっとした空気が立ち込めている。先ほどまで雨が降っていたからだろう。

 京都の裏路地。そんなところで遠くからでもわかるような、大きなにきびを持った男が歩いていた。男は何かを持っていた。あれはくたびれた着物のような気がする。

 この町、この路地、くたびれた着物。これらから察するに男は引剥だろう。

 男は路地を右側に曲がった。その瞬間、男は歩みを止める。なぜなら、とても衰弱している母娘が目の前にいたからだ。母娘が男の存在に気付いた時には遅かった。母親は蹴飛ばされ、娘は頬を叩かれる。そのままの勢いで二人は倒れこんだ。

「や、やめて!」

「きゃっ!」

 男は追撃をやめない。刀を抜いて母親に突き付けた。

「命が惜しくば、言うことを聞け」

 男の目は本気だった。

「ひっ」

 母親は娘をかばいつつ、コクコクとうなずく。その姿を見た男は、
「...恨むなよ。こうしないと飢え死にする体なのだ」
 と言った。

 男はまだ裏路地を歩き続ける。先ほどの母娘のような、男に到底かなわない爺婆や子供を襲っていきながら。男は沢山の衣類、金目の物を盗んでいた。あれならばしばらくの生活に困らない量だろう。

「ふう」

 引剥はもう終わりなのか、道端に座った。奪ったものを見ながら笑っている。そこには子供の衣服のような物も。ありえないくらいに非道な男である。


「なあ、お前」

 男が視線を上げた。その瞬間、思いっきり顔を蹴飛ばす。男は鼻を抑えながら、ゆっくりと立ち上がった。

「ふんっ」

 男が何か言う前に、今度は腹を蹴る。

「......」

 どうやら気を失ったようだ。

「お前...ずっと俺が後をつけてるのに気づかなかったんだな。そうだとしても、路地裏で休みだしたら命がいくつあっても足りねぇよ。」

 男が持っていたものをすべて奪う。

「恨むなよ。俺も飢え死にする体なんだわ」 

 この後俺は止めを刺すために、男の顔を何回も蹴り続けた。

© 2018 奈倉 蔡 このページはカラフルに彩られています。
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